しまずあいみのぽんこつ日誌

~アラフォーになったのでタイトル変えました~

会社説明会にて思うこと

自分は就活を2年やったのだけど、特に1年目は苦労した。今は数ヶ月後ろ倒しになっているようだけれど、自分が就活していた頃は4月中下旬には周りに内定が出ていたので、この時期割とひとりしんどかった記憶がある。

そのせいか特に悩ましい表情の女子就活生を見ると、当時の苦い記憶が蘇り彼女たちの健闘を祈らずにはいられない。電車の中で、つい隣り合わせたおっさんと一緒に熱い視線を送ってしまう。

あれから数年経ったいま、就活の時期には勤め先の会社説明会や社員座談会的なものに参加している。
イケてる上司や同僚が入社を決めかねてる内定者を人事にあてがわれ、その魅力で以って入社を決めさせようとクロージングに励んでいる姿を尻目に、こちとら母集団形成要員として婚活パーティーと見紛うような大規模集団にぶっこまれ、「学生と社会人」という立場の非対称性を武器にそれらしく見せる活動に励んでいるのである。

勤め先の説明会・座談会の仕立ては毎年、その回に参加する社員を数人の学生が囲み、あらかた決められたお題に沿って、ざっくばらんに会話するというものだ。学生にこちら(会社)を選んでもらう場なので、基本的にどんな質問も受ける。
そのなかで唯一気を揉むのは、学生同士の温度感調整である。意識高い系・醒めた感じのリアリスト系・自信がなかったり奥手な子が混在する場合、こちらのファシリテート力が試される。

 一見して「たぶんこの子は絶対、起業・仮想通貨・AIって言うだろうなぁ」と感じた学生からは、100%そのワードが出てくる。そんなグイグイ来る意識高い系につられてしまうと、リアリスト系の学生が白けたり奥手な子がドン引きしているのが手に取るようにわかる。
一方で、ドン引きしていた子が「御社のワークライフバランスって…」と質問し出すと、そんな小せぇ話をしに来たんじゃないと白けた表情の意識高い系の面々。

普段から同席者のテンションの不一致を気にするあまり、合コン一次会の初っぱなからド下ネタを繰り出すほどにはコミュニケーション力に長けたわたしである。焦りのあまり腰掛けたパイプ椅子への貧乏ゆすりが止まらない。

別の会社に勤める友人は、同じく勤め先の就活イベントに出たところ、その形式が「社員の自己紹介を学生がその場で聞いて、話を聞いてみたい社員のところに学生が集まる」というものだったらしい(社員がかわいそうすぎる)。
自己紹介の際、司会から突然「あなたにとって仕事とは?」という、これまた答えにくい質問をされた友人(趣味バンド)は、ついぽろっと「仕事は自己実現ですね」という、意識高いけどなんも考えてない系にヒットしやすいであろうデッドワードを口走ってしまった。

彼女のもとにはしかるべくして「俺も自己実現って考えてるんっすよ」「やっぱり仕事はそうあるべきっすよね」みたいな学生が集まってきたらしく、「50分で『リスペクト』という単語が30回くらい出た」とゲッソリしていた。
最後は「自己実現したいかーっ?!」「イエーッ!」みたいな掛け合いで彼女の50分間のLIVEはクロージングしたらしい。それはそれで楽しい会社である。

ただ「自己実現」にしろ何にしろ、学生が就活でいきなり問いかけられた言葉にとらわれてしまいがちなのは無理もないと個人的には思う。
面接でよく聞かれる「軸」「価値観」「成長」という言葉も特に一人歩きしがちだ。
この間も学生から「価値観って何ですか」と聞かれ「どんなに可愛くても、金遣いが荒かったり財布を出さない女はダメだとか、どんなにハイスペでも親を大切にしない人はダメとかそういうことだよ」と答えたら、目の前のOLの透けた私生活に学生は益々混乱していた。

あとよく見かけるのは企業が連呼する「成長」という言葉につられて、「成長のために成長を目指すべきなのだ」となってる学生だ。

「何でそんなに成長したいのか」と聞くと「選べる選択肢が増える」と言う。ある意味、現時点が最も選択肢や可能性に溢れているのではとも思えるけど、まぁそうなるよね・・・。

「どこでも通用するビジネススキルを持つ人材」なんて実際のところ、ビジネス要件が鬼高いトップ層に限られる。それ以外の人にとっては、組織風土の相性だったりプライベートとのバランスであったり、その他諸々のことの方が影響値が大きくなるのだけど。

でも「成長」のその先が自身の幸せや、やりたいことにつながってるかどうかなんて今時点でその子には見えないのだから、最大公約数を取りに行くしかないのだろう。

余談だが「成長」といえば、人気ブロガー・トイアンナさんはあるブログ記事で「成長とは、ある文化に適応するだけ」という面白い観点で記事を執筆されている。

※トイアンナさんはこの記事以外にも就活について実践的な記事も多数執筆されているので、うさんくさい化石みたいなおっさんに就活指南を受けるくらいなら、トイアンナさんの記事を読破することをおすすめしたい。

toianna.hatenablog.com

トイアンナさんの記事の観点も思い当たる節があり過ぎるが、個人的には成長とは「夢中」の副産物だと思う。

なので「成長」を望む学生には、夢中になれる、夢中にさせてくれる環境をおすすめしたい。否が応でもバッターボックスに立たされまくり、望まずとも入社してすぐスタメン入りさせられ、ベンチウォーマーになる選択肢は与えられないような環境。

そういう環境で、元々は自分の「成長」とかなんとか小さいこと(失礼)を気にしてたやつがクライアントやカスタマーなど「自分以外のこと」で頭がいっぱいになって、無我夢中でやってたら気付いたらいつの間にかできることが増えて、昔の自分をすこし踏み越えてたりする。

「成長」するのに、キラキラした職場もスゴイプロジェクトも必要ない。「尊敬できる先輩や上司」はあったら良いレベルのオプションで、大事なのは「必死な自分自身」のみ。だからその意味では「必死にさせてくれる」環境は必要だけど、成長そのものは「毎日必死にジャンプしてたら気づいてたら背が伸びていた」くらいのものだとわたしは思う。

意識高い系の学生からよく「夢はなんですか?」と質問されて「特にない」と答えるとあからさまにガッカリされるのだけど、逆にいうと夢がなくったって夢中になれる。「現時点ですごくやりたい、ということがないんですが・・・」と心配している子も何も心配することはない。

自分は何がやりたいのか、何に人生をかけるべきなのか、働いて数年経ってもそれらを自身の言葉で言語化できる大人がどれだけいるのだろうか。それを腹決め出来ている大人もいるけれど、そうじゃない人も大勢いるから本屋で自己啓発本があんなに平積みされているのだ。

就活生に「軸は?」と聞く大人だって、仮決めと軌道修正の連続で、自己理解と探求を進めてる最中だし、大半の人にとって人生とはそういうものだと思う。

「社会人は大変だ」と大人は言いがちだけれど、家庭にしろなんにしろ集団に所属することは、理不尽に出会うことだと思う。何もその組織が特有なのではなく、人間が集まれば集まるほど固有の「理」が多くなって、固有の事情は通らない。

以前働く人を対象にした何かのアンケートで、ストレスのぶっちぎり1位(80%超)は「職場の人間関係」というのを見かけたことがある。大人になっても人は「人」相手に一番悩んでしまうものだけれど、救われるのもまた人によってである。

上司や同僚・後輩と話してると、自分には及ばない視点や視座にイケてるなぁと思うことがあって、取引先と話してるとすこし報われる瞬間があって、たまに自分のやったことに成果がついてきたりして、そのおかげで最低限「悪くないな」と思える自分がいて、それがどんなにありがたいことかわかるから、わたしは今日も会社に行くのだと思う。

身もふたもない誰得の文章になってしまったけれど、夢見る夢なしOL生活も、まぁ悪くないものだよ。

 

【トイアンナさんの就活系コラム】

www.onecareer.jp

【自分が就活留年した時のことを書いたエントリです】

「小さなOK」を出し合って、人は生きてる。 - アラサーOL クソ日誌。「小さなOK」を出し合って、人は生きてる。 - アラサーOL クソ日誌。