しまずあいみのぽんこつ日誌

~アラフォーになったのでタイトル変えました~

妊婦日記 in パリ(その1:健診と買い物事情)

フランスに移住して早5ヶ月。
そのうち、つわり+外出制限で引きこもること、早3ヶ月。


語学学校も休校、近所の方に雇っていただいたシッターのアルバイトも当面休みになった。

 

そんなわけで、大食いyoutuberの動画で日本食への執着を紛らわし、SNSで寂しさを紛らし、少し語学を勉強する日々を送っている。

 

もはや「あんた何しにフランス来たん…?」であるが、この日々も後から思い返せば「貴重な過ぎ去りし日々」となるはずなので(なるのか?)、日記を綴っておこうと思う。

 

初回のこの記事では、いまの身の周りの状況(フランスの状況、買い物などの日常生活)についてつらつらと書きたいと思う。

 

フランス国内で外出制限措置が敷かれてから、1ヶ月以上が過ぎた。

「止むを得ない仕事・食品の買い出し・1時間以内の運動以外は、外出禁止」という厳しい制限を行っているにもかかわらず、感染者は増え続け、死者数は2万人を突破した。

 

一方で、入院患者数(=重症者数)と集中治療室で治療を受けている患者数は減少しているとの報道も。
このまま収束への光明が見えてくれるかどうか、という状況である。

 

フランス政府は、現状と同じレベルの外出制限は「5/11まで」と広報している。

5/12からは、保育園と小中高校の一部学校・学年が、段階的に再開される見通し。
飲食店などの集客施設や食品小売以外の店舗の営業再開は、まだその先だと言う。

 

ただ、一時期に外出制限が緩和されたとしても、有効な治療薬とワクチンが開発されるまではいたちごっこだ。


夫の仕事の都合上、こちらにはあと2年住む予定だが、2年間このままの状況でひっそりと終わる可能性もある。

であるならば「収束したらイタリアに旅行に行きたい!」などと極力考えないようにして、幸せの閾値と期待値を極限まで下げて、生活している。

 

そんなご時世なので、妊婦日記と言いながら、健診には、通院先に先月、診察拒否を受けてから行っていない。
理由は高齢の院長の感染予防のためである。院長にとっては死活問題だ。

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フランスでは、検診・エコー・産院、それぞれ病院が別の分業制である。

 

この院長に以前、「産院選びに迷っている」と相談したら、「世界中の妊婦のうち、病院で出産するのはほんの2割だ。だから心配することない」との返答を受けた(数字はうろ覚えです、すみません)。

産科医の存在意義すら揺るがしかねない大胆な回答に、「まぁそんなもんか」と思うようにした。

 

この病院は、日本人の奥様を持つ、フランス人の院長一人で営む個人院だ。
通訳を付けることのできる「アメリカンホスピタル」以外で、日本語が通じる産科医は、この先生しか聞いたことがない。

 

夫は、日常生活でのフランス語には困らないが、妊婦検診・出産となるとそうもいかない。

日本でも同様のケースが発生していると聞いたことがあるが、こちらでも妊婦以外の付き添い禁止の病院が増えている。


この先生なら出産前まで日本語で診察を受けられるので、わたしにとっては頼みの綱。
その意味でも、先生には長生きしてもらわねばならない。

(ちなみにアメリカンホスピタルは、かのアンジェリーナ・ジョリーも出産したという総合病院である。が、検診+分娩+3日間の産後入院で累計200万円超えと、やはり価格もセレブなので、自分にとっては最後の切り札である)

 

そんなこんなで、欧州の状況が、日本でどのように報じられているかは分からないけれど…。
わたしに限って言えば、大変かと問われれば、そんなこともない。

 

医療従事者や補償などの手続きに関わる公務員でもなく、終日付きっきりで世話をしなくてはならない、小さな子どもも居ない。


自宅でリモートが可能であったり、経済的に大きな打撃を受けずに済んでいる人々の暮らしは(少なくともわたしは)、至って平穏で地味なものである。

 

家から一歩出てみると、食品関係以外の店舗は軒並み閉まっているものの、買い出しに出ている人がポツポツと出歩いている。

ちなみに外出には、いかなる場合にも「外出許可証」の携帯が必須だ。

 

証明書には、氏名と外出目的と日時を、外出の度に明記しなければならない。
これを携帯していないと、巡回している警察に、問答無用で罰金135ユーロ(約1万6,000円)〜375ユーロ(約4万4,000円)を徴収されてしまう。
(回数を重ねると金額が大きくなり、30日以内に違反を重ねると最大で禁錮6ヶ月らしい)

 

この1ヶ月で、罰金対象となった違反報告は累計約70万件以上にのぼると聞いた。
罰金が平均3万円/回と仮定して、累計210億円である…。

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春物が店頭にディスプレイされたまま…(涙)道が汚いのは、通常運転。

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 スマホでも作成可能になった外出許可証

 

現在多くのスーパーでは、店内を過密させないために、入場制限が行なわれている。

 

お客は、スーパーの外で前後の人と1メートル間隔で並び、店員が入店を促すまで入店してはいけない。
時間帯によっては、数十メートルの行列に並ぶことになる。


入り口には、クラブのセキュリティを思わせる全身黒ずくめのマッチョが立っているので、みんな大人しく待っている。

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偶然、全身黒ずくめのお姉さんを写してしまったが、行列は写真左である。

 

しかしそこまでの厳戒態勢を経てやっと入店した店内には、果物や野菜が包装なしのむき出しで積まれている。


それをみんな素手で掴んで棚から取ったり戻したりしているので、果たして衛生的にどうなんだろうと思うけど、郷に入っては郷に従うしかない。
(最近はビニール手袋をしているお客も増えたが、顔やら色んなところを触った手袋で食品に触れたら意味がない)

 

国からリモートワークを半強制されているこちらでは、外出して働いている人はそう多くない。

そのなかで、スーパーやフードデリバリーで働く人には「自分たちは危険に身を晒して仕事をしている」という意識を強く持っている人が多い。

なので外出制限が始まってすぐに、従業員とお客ができるだけ接触せずに済むよう、配慮がなされた。

スーパーのレジは、お客との接触を避ける様に透明なビニールシートで覆われ、現金の受け渡しはトレー上で行い、店員はマスク+手袋+フェイスシールドで防備している。

 

以前から、買い物に外出する際は、言葉や仕様がイマイチわからないためおっかなびっくりだった自分。
ただでさえそうだったのに、ピリついた雰囲気が漂う最近のスーパーに行くのは毎度緊張している。
帰路ではいつも「今日は怒られなかった…」と、心の底から安堵のため息をついているのだが、我ながらどんだけビビリだよ。

 

もし、フランスのスーパーで「マスクは置いてないのか」なんてゴネたら、店総出で激ヅメされるかフルボッコにされるかのどちらかだと思う。


日本のサービス事業者の方のホスピタリティは抜群だけど、どうか高慢なお客の犠牲にならないで欲しいと願うばかりだ。

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写真では見えづらいけれども、フランスでは毎晩20時に「医療従事者や外出して働く人々に対して、感謝とエールを送る」という意図で、各々の家の窓を開けて、拍手を送るという習慣が、1ヶ月経った今も続いている。

 

ウチから道路挟んだ向かいには、隙間なくアパルトマンが並んでいる。
だけど、拍手の時間に見かけるのは、そのうちほんの数世帯だ。

 

かと言って、他の時間に在宅している様子も見えないので、どうやらほんの数世帯をのぞいて留守ではないかと思う。

 

パリの人は、バカンスやら何かにつけ、すぐパリを脱出しようとするとよく聞く。


もちろんパリが好きで住んでる人も多いと思うけど、以前、フランス人に「パリに住んでる」と言うと、「お気の毒に…」と返されることがあると聞いて、驚いたことがある。

 

今回も外出制限が始まる直前に、郊外や地方に脱出した人も多いと聞いた。
外出制限が発表されて以降も、地方へ移動しようとする人々が続出し、軒並み違反者として罰金対象になったと報道されている。

 

しかし4月に入ってからというもの、20時でもこの明るさである。

日光浴と、テラス席で飲むワインをこよなく愛するフランス人にとって、今年はどんな夏になるんだろうか。

 

パリで過ごす最初の夏は、なんだか冴えないものになりそうだけども、いまはとにかく「生きてるだけでまるもうけ」だと思って、ありがたく生きていきたい。